解析手法
ELF/MAGIC、ELFIN、磁気モーメント法は積分方程式法の一種です。
解き方に共通点が多いので次の順に説明します。徐々に複雑になります。
① ELFIN、1要素の場合(1変数、電荷1個)
② ELFIN、2要素の場合(2変数、電荷2個)
③1変数の磁気モーメント法、1要素の場合(1変数、磁荷2個)
④1変数の磁気モーメント法、2要素の場合(2変数、磁荷4個)
⑤ ELF/MAGIC、1要素につき6変数、磁荷6個
ELFシリーズは、次のような手順で問題を解いています。
[ ELFIN ]
1.電場のソースを変数とします。変数は電荷や分極などです。
2.電位、電場のクーロンの法則やDE曲線の関係式を使って方程式を立てます。
3.方程式を解いて、電場のソースを確定します。
4.電場のソースが作る電場を、クーロンの法則を使って計算します。
[ ELF/MAGIC ]
1.磁場のソースを変数とします。変数は磁荷や磁気モーメントや渦電流などです。
2.磁場のクーロンの法則、ビオ・サバールの法則、ファラデーの法則やBH曲線の関係式を使って方程式を立てます。
3.方程式を解いて、磁場のソースを確定します。
4.磁場のソースが作る磁場を、磁場のクーロンの法則、ビオ・サバールの法則を使って計算します。
電位(電場)の場合(ELFIN)
3個の電極の例です。
各要素の中心で、それぞれの電位Vが指定されているとします。
各要素の形状は四角形で、それぞれの電荷密度σは各面内で一様であるとします。
①ELFIN、1要素のみの場合
要素の中心位置の電位V1の大きさは、電荷密度σ1に比例します。
比例定数G11は次の積分式で計算できます。
(積分は要素の面について行います。)
V1をG11で割れば電荷密度σ1が得られます。
②ELFIN、2要素の場合
2番目の要素の電荷による電位も加えます。
比例定数G12は、次の積分式で計算できます。
(積分は2番目の要素の面について行います。)
V2についても同様に式を立てることができます。
これにより、次の連立一次方程式が得られます。
(σ1, σ2)が未知の値、(V1,V2)が指定された電位です。
方程式を解けば、要素の電荷密度(σ1, σ2)が得られます。
電荷密度が確定すれば、任意の位置の電場と電位が計算できます。
変数が多数の場合も同様に計算することができます。
磁場の場合(磁気モーメント法)
3個の磁性体の例です。
外部磁場 H0 の中に、磁性体の要素があるとします。
各要素の形状は直方体で、それぞれの磁気モーメントMは各要素で一様であるとします。
磁気モーメントMは要素の中心位置の磁場Hに磁化率 χをかけたものとします。
③1変数の磁気モーメント法、1要素のみの場合
要素の磁気モーメントM1が作る磁場を計算します。
まず M1を等価な表面磁荷σ1に置き換えます。
σ1=M1・n (nは単位法線ベクトルです。)
表面磁荷が作る磁場をクーロンの法則により計算します。
要素の磁気モーメントM1は、要素内部に反磁場h11を発生させます。
比例定数G11は次の積分式で計算できます。
(積分は直方体の場合、要素の2つの面について行います。)
要素内部の磁場H1は、反磁場と外部磁場の和で表すことができます。
磁場と磁化率をかけると磁気モーメントになります。
代入するとM1についての方程式が得られます。
M1について解けば、磁気モーメントが得られます。
④1変数の磁気モーメント法、2要素の場合
2番目の要素の磁気モーメントによる磁場h12も加えます。
H2についても同様に表します。
磁場と磁化率をかけると磁気モーメントになります。
代入すると、(M1, M2)についての連立方程式が得られます。
連立方程式を解けば、要素の磁気モーメント(M1, M2)が得られます。
磁気モーメントが確定すれば、任意の位置の磁場が計算できます。
変数が多数の場合も同様に計算することができます。
⑤磁気モーメント法からELF/MAGICへ
要素内で磁気モーメントが一様と考えて解く手法を磁気モーメント法といいます。
要素の変数の数はX,Y,Z方向の3成分があるので3個、磁荷は6個です。
この方法では磁気モーメントが要素内で曲がらず、磁束が直進します。
ELF/MAGICでは、1個の要素の変数の数を、面の数と同じ6個にしています。
こうすることによって、磁束が自由に曲がるようになります。
ELF/MAGICでは、磁束が要素内で曲がり、あるいは広がり、次の図のように自由な磁束の流れを表現できるようになっています。
メッシュ分割の注意点
有限要素法では要素と要素の接合面において節点を共有する必要があります。
一方、磁気モーメント法やELF/MAGICでは節点を共有する必要がありません。
接合面では面磁荷がほぼキャンセルすることによって磁束が流れます。
従って、下図①、②のように節点を共有しない分割も可能です。
しかし、一つの面の磁荷密度が一様なので、② のように分割すると
キャンセルされない面磁荷が磁性体表面に現れ、
そこから空気への磁束の漏れが大きくなってしまいます。
そして、磁性体内を流れる磁束は少なくなってしまいます。
①の分割のほうが精度よく計算できます。
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